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第9回 「付着塵ロガー」


様々な不具合を引き起こす厄介者のゴミや埃ですが、これが空気中に浮遊している限りは基本的には問題とはなりません。どれだけ浮遊塵が多くても、素材や製品に付着しなければ良い訳です。

もちろんこれは半分冗談で、現実には事はそれほど都合よく運びません。

浮遊塵はある確率で確実に付着塵となり、不具合を引き起こし、余分なコストを発生させる事になります。

 

お客様の現場を訪問させて頂くと、比較的高い頻度で次のような事例に出会う事があります。

「空調装置にHEPAフィルターなどの高性能フィルターを導入しており、室内環境をパーティクルカウンターで測定すると0.5μmサイズの異物もしっかりコントロールされている。にもかかわらず、製品には数百μmクラス(時には1mmオーバー)の異物不具合が比較的高い頻度で発生する」

というような状況です。

 

なぜ高性能フィルターでクリーンな(はずの)環境下で、このような不具合が発生するのでしょうか?

なぜパーティクルカウンターでは実態を捉え切れないのでしょうか?

 

それは「浮遊塵」と「付着塵」の性質の違いに起因します。

「浮遊塵」は文字通りゴミや埃が空気中に浮遊している状態で、これが重力による自然落下や静電気、慣性力などによって製品表面に付着した時に「付着塵」になります。

また一度「付着塵」となったゴミや埃も、何らかの外力が加わることで再び「浮遊塵」になる事もあります。

ここで注意が必要なのが、浮遊塵が自然落下するスピードは大きなサイズの異物ほど早いため、サイズの大きな異物は比較的早く落下して「付着塵」になるのに対して、サイズの小さな異物は長い時間空気中に漂い続ける性質があるという点です。

 

異物がどれだけの時間空中を浮遊するかは異物のサイズ・密度や周囲の風速にもよるのですが、一般的には数十μmを超えるような異物は比較的短時間で自然落下するため、てパーティクルカウンターなどの浮遊塵用の測定器で捉えるのは困難になります。

一方、外観不良として問題になる異物のサイズは、まさにこの数十μm以上である事が多いため、冒頭のHEPAフィルターの事例のような状況が発生する事になります。

 

ここで考えて見たいのは、「クリーン度の監視基準として浮遊塵の測定で十分なのだろうか?」という点です。

確かに昨今話題に上るPM2.5のように数μm以下の異物が問題になっているのであれば、これらは比較的長い時間浮遊を続けますので、浮遊塵を測定する事で状況を的確に捉える事ができます。

しかしながら、もし皆さんのお悩みが数十μmを超えるようなサイズの異物ならば、パーティクルカウンターなどで測定する浮遊塵の量を一定基準以下に保つことは「必要条件」ですが「十分条件」ではありません。

(浮遊塵の測定を軽視して良い訳ではありません。浮遊塵の管理はクリーン化の基礎的な条件です。ただし工程の特性や要求品質レベルに応じて、0.1μmや0.5μmの管理に意味があるのかといった、管理対象の異物サイズについては精査が必要な場合があります)

 

また「数十μm以上の異物は発生地点近くに落下するとすれば、一般的に人が立ち入れない生産ライン内の評価はどうすれば良いのだろうか?」という疑問も出てくると思います。

 

例えば実際の製品が生産設備等に起因する大きな異物を、雨あられのように浴びている状況であっても、そこから少し離れた場所での浮遊塵の測定ではうまく捉えられない可能性が高くなります。

浮遊塵とは異なる動きをする付着塵は、それに見合った測定方法を用いる必要があります。

言い換えれば、もっと「モノの気持ち」を代弁できる評価手段が必要なのです。

 

このような付着塵の存在は、粘着シートや鏡面プレートを一定時間定点暴露したり、生産ラインの中を通過させたりする事で確認する事ができます。

 

こうした方法では測定結果の確認などに若干手間がかかりますが、単に浮遊塵の測定をするだけでは得られない有益な情報が得られる場合が多くあります。

また捉えられた異物を顕微鏡などで分析できる事も、これらのツールの利点です。

もし、まだこのようなツールを使った評価をしていないのでしたら、一度行なって見る事をお薦めします。

 

私のコンサルティングでも付着塵の確認の重要性は増しており、今回の冒頭の写真はこの測定用に開発したツールの一つである「付着塵ロガー(APL : Adhesion Particle Logger)」で可視化した異物のイメージです。

APLは主に生産ラインに投入して、実際のライン上での付着塵量を可視化し記録しますので、実際の製品の目線に極めて近い状況を知る事ができます。

また記録した映像は画像処理ソフトウェアによって異物量を自動カウントする事ができるため、カウント工数の大幅な削減が可能です。

何よりも得られるデータが時間軸付きであるため、得られたデータと工程内のイベントを結びつけることによって、思わぬ工程内の真実が明らかになる場合が多くあります。

 

APLは狭い生産ライン内などの、比較的暗い場所での使用を得意としていますが、他に一般的な室内照明下での測定を可能にするため、自動開閉カバーを装備して外光の影響を排除できるタイプの装置も開発しており、状況によって使い分けています。

 

 

 繰り返しにはなりますが、「浮遊塵の管理は必要条件であり、十分条件ではない。付着塵の評価にはそれに適した手法を用いる必要がある」事を強調させて頂き、今回のまとめと致します。