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第3回 「可視化」


改善トピックスの第1回「見える化という仕事」でも触れさせて頂きましたが、私は“見える化”を、文字通り目には見えない事象を見える様にする“可視化”手法や、事象を何らかの方法で数値化する“定量化”などを含む、若干大きな概念として捉えています。

今回はこの中の“可視化”について、少し具体的な例でお話をさせて頂きたいと思います。

 

例えば塗装面の異物不良が増え、塗装前の素材表面に付着した異物の影響が疑われたとします。こうした場合、素材の拭き取りやエアブロー、除電方法などを変化させて検査結果の良かった方法を選択する場合があります。

ここで素材の拭き取りを行った製品のゴミブツ不良が減り、それ以降は拭き取り作業を標準工程としたとします。

これで改善が進んだと考えて良いものでしょうか?

 

私はこの例のようなケースで、しばらくしてまたゴミブツ不良が増加し、また同じ問題の繰り返しになるという経験をしばしばしています。

ゴミブツ不良に苦労した方なら心当たりがあると思いますが、このような対策を取った場合、次に出るのは作業のバラツキよる拭き残しや、場合によっては拭き取りによって発生する静電気など、追加作業による副作用問題となるかもしれません。

 

今回の例では「素材が汚れているハズ」、「拭き取りによってキレイになっているハズ」、「不良率が下がったのは改善効果のハズ」といった推察を積み上げて対策を決めていますが、不良率は日々変動します。

次に不良が増えた場合、どういう判断をするのでしょうか?

「素材がもっと汚れているカモ?」、「拭き取り作業が適正でないカモ?」という事で、素材供給部門や拭き取り作業者に注意を申し入れ、また翌日の検査結果で一喜一憂する事になるでしょう。

可視化も定量化も出来ていない改善では、次に不良が増えた場合にはまた最初から再スタートになり、多くの場合堂々巡りになります。

 

このケースで本来確認するべきなのは、「素材は本当に汚れているか」と「拭き取りによって素材がキレイになるのか」ということで、この確認に必要なのが「可視化」手法という事になります。

もっとハッキリ言えばLEDライトを持って現場に走り、加工前と拭き取り後の素材表面を確認するだけ済む話なのです。

その上で加工前の素材が「確かに汚れていて」、拭き取りによって「確かにキレイになる」ならば、拭き取り作業は“少なくとも素材の汚れが解消されるまでは”行うという事です。

 

不良率のデータはあくまで参考値です。(もちろん現場管理や改善優先順位を考える上での最重要指標の一つですが、あくまで”個別の改善効果の判定には”という意味です)

不良率が参考値程度というと抵抗感があるかもしれませんが、ゴミブツ不良の原因は多岐に渡るため、何か一つの要因を変化させてその結果を見ようとしても、他の要因が一定ではないため誤った結論を導き出してしまう事が多いのです。

よほど大きな要因が放置されているケースを除いて、現在の製造現場で一つの要因を変化させた改善効果を最終検査結果で判定する事は難しくなっています。

 

本来効果があるのにテスト当日たまたま他の要因が変化したため不良が増加し、効果が無いと判定されるケースや、逆に本来効果がない改善が採用される場合もあり、世の中にはこうして作られた“神話”や“おまじない”のような加工手順が多くあります。

以前はLEDライトなど異物を直接見る道具がなかったため、やむを得ない部分もありましたが、今でもこうした事が行われているとすれば本当に惜しいことです。

 

基本的に目に見えない事象は改善できません。

今回は異物によるゴミブツ不良の例でお話しましたが、実際の製造現場で現実が目に見えないままで改善に取り組んでいる例は少なくありません。

逆に言えば目に見えないからこそ問題として残っているとも言えますが、いずれにしても、目に見えない事象は“見える化”することが改善の第一歩です。