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富士山

第2回 「モノの気持ち」


皆さんの工場には様々な装置がある事と思います。

またそれぞれ装置には多くの計器が取り付けられ、その表示する数値が刻々と変化するもの、ほぼ一定の値を表示しているものなどがあると思います。

 

それでは、この計器に表示されている数値は何を表しているものでしょうか?

 

乾燥炉の温度制御に使われる温度調整器を例に考えてみると、表示される値は乾燥炉に設置された温度センサの測定値を表す事が多いと思いますが、例えば80℃の乾燥温度が必要な塗料では、乾燥温度の設定値を80℃にすればOKなのでしょうか?

 

実際には多くの方がこれではうまくいかないケースがある事を経験されていると思います。

この場合、80℃はあくまで乾燥炉のどこかに設置されたセンサの値を表示しているだけで、本当に必要な製品表面の温度を表してる訳ではないからです。

こうした問題に対応するために、耐熱ケースに入れた温度記録装置を乾燥炉の中に入れて、実際の製品表面の温度を測定し、必要に応じてセンサ位置の調整や温度計の校正を行う事は一般的に行われると思います。

 

極端な例では、乾燥炉の掃除中に誤ってセンサーを曲げてしまい、普段と異なった位置の温度を計測した事によって、実際の乾燥温度が変化していたということもありました。

この際は幸い、実際温度が高くなった事で製品が変形したため、比較的早く不具合が発見されましたが、逆に温度が低くなる方向だった場合はもう少し被害が長引いたかもしれません。

 

こうした問題はもちろん乾燥炉だけではなく、恐らくほとんど全ての工程で発生する(または発生する可能性がある)ものだと言えます。

例えば水洗による洗浄装置で水圧を監視している場合、水圧が下がれば何らかの問題が発生している事が捉えられる可能性がありますが、水圧が上がった場合はどうでしょう。

配管内が詰まった場合などにも水圧は上がる訳ですが、これはどのように捉えればよいのでしょうか。

 

この場合は流量を同時に監視したり、ポンプの負荷を測定したりという事で監視精度を上げる事は出来ると思いますが、結局のところ計器の値というのは本来測定したい対象(先の例では製品表面の温度や、表面に実際に当たる水の力)の代用であるという事は常に頭の片隅に置いておく必要がありそうです。

 

また本来測定するべき対象に近い値を得るための努力も必要になります。

乾燥炉の例では耐熱ケースと適切なセンサによって、実際の製品が味わう環境により近い値を捉える事が可能になりました。

洗浄装置の場合でも、防水ケースとフォースゲージの組み合わで実際の製品が受ける水圧を定量化できます。

 

クリーン化においては、普通パーティクルカウンターなどでは人が立ち入れない生産工程内部のクリーン度は測定できないため、工程周辺を測定して代用とする事が多いのですが、測定装置を工夫して実際の製品が通る道筋で測定すると驚くべき結果が出る事も少なくありません。

 

こうした製品が実際に工程内で味わう状況を見える化する事、言い換えれば「モノの気持ち」になって考えられるようにする事が改善の突破口になる事は多く、様々な改善ツールを製作する上での私の出発点ともなっています。